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§ 龍王の巫女姫 §
第22章 蛇の落とし子
「…僕は十分に幸せでしたよ」
寝台に背を向けた蒼慶。
今度は、誰も呼び止めなかった。
いや……呼び止めることができなかった。
「怒りを背負う化け物は、もうそろそろ退場しなければ」
「──…」
「孤独の辛さを知る炎嗣なら、民に寄り添う王になれる。…必ず」
やっと見つけた切り札。
自分が表舞台から消えたとしても、跡を継いでくれる男。
だから僕は蛇になる。
邪悪な僕は、嫌われ者の蛇になる。
「──…蒼慶、…息子よ。…また会おう」
「……ありがとう、父さん」
精巧な浮き彫り細工の施された、寝所の扉。
重たい音をたてて開き、迷い無い青年の後ろ姿を呑み込んでしまった──。
───…