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§ 龍王の巫女姫 §
第23章 愛するあなた達へ
「炎嗣様が死んでしまう…──と、そう思っただけで…ッ 周りの炎なんて気にならないくらい、哀しくて苦しくて…!!」
どうしても助けたかった
炎嗣様だけでも…!
炎嗣様が死ぬのだけは、心の底から嫌だったから。
「……成長しましたね、水鈴様」
水鈴の言葉を聞きながら、花仙は優しく彼女の手を取った。
小さな右手を、花仙が両手で包む──
水鈴の身体を支える炎嗣は黙ってそれを見ていた。
「水鈴様はひとりで逃げようと思えば…それが可能だった筈。…しかし、貴女は彼を救おうとした」
「……」
「愛するとはそういうものです、自身を犠牲にする事をいとわない……。水鈴様、貴女は…──」
守られてばかりだった水鈴が
初めて誰かを守ろうとしたのだ。
「──…貴女の愛は本物だ。もう、迷わないで…」
「……迷わなくて…いい、の…?」
「いいのです」
「…ありがとう、花仙…。でも、わたしはまだ気持ちの整理がついていないのです…っ」
「…迷う必要などない。恋と愛は違うのだから」
「──…!」
花仙はまだ、彼女の右手を包んでいた。
愛おし気に…小さな力で握ってから、花仙はゆっくりと手の力を抜いた。