この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
§ 龍王の巫女姫 §
第23章 愛するあなた達へ
去り行く彼の後ろ姿は、やはり見るに辛かった。
だからまた泣きそうになる…
水鈴は、涙を堪えるために炎嗣の胸にすがり付いた。
「──おい」
炎嗣が花仙に向かって叫んだ。
花仙は振り返らないけれど、かまわず炎嗣は大声で続けた。
「桃源郷の離宮で…」
「……」
「離宮の管理をしている呂( ロ )夫婦が、…覚えてるだろう?──…あの二人が、自分達には孫がいないからと寂しがっていたぞ」
ちゃんと聞こえているのだろうか
炎嗣にはわからないが、それでも言わずにはいられなかった。
「蒼慶……」
──…いや、今はもう花仙なのか
最後に礼を言いたかった。
しかし礼を言ってしまったら…
それが本当に、最後の言葉になりそうだから
だから炎嗣は…別れと謝意を胸の内に留めた。