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§ 龍王の巫女姫 §
第25章 終章
「…わたし、噂で聞いたのだけれど」
「──…何をだ」
「李国の人々は炎嗣様を《 龍王 》と呼んでいるそうです。…ご存知でした?」
「……龍王、か」
簪を付けた手で、そのまま彼女の頬を撫で──
指の甲で、ふわり唇に触れる。
「素敵でしょう?」
「悪くは…ないな…」
水鈴は顔をあげて待っていた。
魅惑的な唇が、自分を奪ってくれるのを。
“ 神様が相手でも…何も怖くない ”
彼女には龍がついている。
どれだけの哀しみが襲ってこようとも、天翔る龍が彼女を守り続けるだろう。
大国、李の…春が咲き誇るここ王宮で
王に愛された美しき銀髪の乙女は、自身を掻き懐く逞しい腕にすべてをあずけ…
胸を突き破るような幸福感に浸りながら、紫紺の瞳を閉じ込めた目を静かに伏せた───。
『§龍王の巫女姫§』(完)