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§ 龍王の巫女姫 §
第26章 後書き
◇◇◇
そして最後のひとりが《 哀しみ 》を背負わされた水鈴です。
村の中で巫女として育てられた彼女は、外の世界の厳しさも、人間の卑怯な一面も、何も知らずに生きてきました。
何も知らないから幸せだった。
花仙への想いをつのらせながら、ただ純粋に生きていたのです。
けれどその生活も終わりを告げ──水鈴は現実を突き付けられます。
現実は残酷で、生きるのは辛い事の連続です。
だから水鈴は堪えきれずに涙を流します。
もし…彼女が、人を恨んだり、他人を責めたりできたなら、その哀しみも柔んだだろうに…
水鈴は炎嗣に復讐することもできなかったし
村人を殺した花仙を恨むこともできません。
だから氷の中に閉じ籠もり、哀しい現実から逃れようとした水鈴──
炎嗣が、そんな彼女を連れ戻しました。
目を背けるな、と…
哀しい現実の中に、幸せを見つけろと。