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§ 龍王の巫女姫 §
第4章 狂気
いま見た光景を、怖くて思い出せない。
ただ涙が出てくる。
もう…目を開けることができない。
パキ、パキ、パキ...
横に迫る火の手を感じようとも
彼女の足は使い物にならない。
──…これは、夢なのか
まだわたしは悪夢を見ているのだろうか。
それなら納得できる。こんな光景は、現世に似つかわしくないのだから…。起こっていい筈がないのだから。
わたしを毎晩襲っていたのは
きっとこの悪夢だったのね。
…それなら納得よ
きっとそうよ、これは…夢で…!!
「…ふッ…ぁ…!!……あ…ッ」
夢なんだ。
そう言い聞かせながら、必死に言い聞かせながら、水鈴は顔を覆う手を外した。
「夢…だもの、怖くないわ…っ夢だもの」
卵屋のおじいちゃん
米売りのおばさん、お姉さん
鵜飼いのおじさん
下駄職人のおばあちゃん
変わり果てた姿…
こんなの、あり得ないわ、信じないわ。
だって只の夢ですもの。
だから早く覚めて。
わたしは騙されないのよ。
ほら…いつもの唄が流れてきて…
わたしを夢から連れ出して。
行かないで、迎えにきて
待って、駄目よ、わたしは此処よ?
「…誰か…っ…!!」
ちゃんと見つけて
ほら
「──…水鈴様!!!」
──早く