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§ 龍王の巫女姫 §
第4章 狂気
「…か…!」
「水鈴様! 何故貴女が此所にいるのですか…!!!」
「花仙…っ、ごめんなさい…!! だって」
「──…っ」
泣き崩れる彼女を見つけて駆け寄ってきたのは、皆と同じ様に血まみれの花仙だった。
いや、その怪我は村人と比べ物にならぬかもしれない…。
皆が一太刀で息絶えているのに比べ
花仙はもう…身体中の傷口から紅い血を流し、破れ焦げた服は原型をとどめていなかった。
数刻前に彼女が手当てした包帯も、いまは無惨にほどけ辛うじて引っ掛かっているだけだ。
「また酷い傷を…!!」
「…っ…見てはなりません!目を、目を閉じてください…!! 」
跪き、片腕で水鈴を抱き締めた花仙は
その手で彼女の顔を覆った。
「何故、目覚めてしまったのか……!!」
「……っ…」
いつもは冷静な花仙の、このように余裕のない声を初めて聞く。
彼の腕に抱き締められた状態で
水鈴はその両肩に手を置いた。
「わたしは目覚めておりません…っ」
「…? 水鈴さ…」
「これは夢です!だから花仙、早くわたしの目を覚ましてください…!! …お願い、です。これからは花仙の忠告を守りますから…、巫女らしく務め、己の欲を抑えます!だから…──」
「……っ」
「…だかッ…ら」
たとえ花仙であろうとも、どうにもできない。
怯える彼女を眠りにつかすことはできても、目の前の現実を変えることはできないのだ。