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[続]天地を捧げよ〜神剣伝説〜
第21章 嘆きの報復


◇◇◇


薄灰色の袴がそこらを歩く度に埃が舞う北の山の奥深く。

天井にすっぽりと穴の開いたそこで、粉々に砕けた白い神の巨像の欠片に囲まれ、宰相は声を唸らせた。


「まあ…何よりも皆(みな)が無事で良かった…この有り様で怪我をした者が居らぬということを幸いと致そう」

「はい……妃奈乃様はこの事を預言して居られました…」


「……なるほど…わかって居ったのに此処を離れられたということは…妃奈乃様なりの考えがあったのであろう……皆に危険が及ばぬのも承知の上だったということであろうからな」


「………」


宰相の言葉に白い神の使い達は深く頷き返す。

断末魔のような叫びの轟音を聞いた翌朝…


いつもならろうそくの灯りが揺らめく暗い筈の洞窟も、今は穴の開いた天井から注ぐ朝日の明かりで全体が見渡せる。


遅い時間にでも直ぐにこの惨状の現場に兵士を従え駆けつけたこの国の帝に神の使い達は敬意を払った。


数十名の兵士達は粉砕された像の後始末に取り掛かっている。


「妃奈乃様の居らぬ今、余がここを離れるべきか考えあぐねたが……」

前を見据えた宰相に、神の使い達は静かに口を開いた。

「宰相様。妃奈乃様がこの地を我々に託し東へと赴かれたということは、おそらくこの地に災いは降り掛からぬと確信されてのこと──宰相様は、どうぞ御自分の為すべきことを」

地面に深々と頭を下げた者達の前で宰相は目を閉じる。そして無言のまま、ゆっくりと頷いていた──。

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