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[続]天地を捧げよ〜神剣伝説〜
第25章 密葬
冷たい雨風が部屋の窓ガラスに強く吹き付けていた。カタカタと揺れる窓枠の音が静かな室内に響く。
辺りには乾燥させた薬草の香りが広がっていた。
「入るぞ?」
扉のノックが一回。気をつかってか、控え目に外から声がかけられる。返事を確認すると、ルイスは部屋の中に入った。
「どうだ?」
ルイスに尋ねられ、ルーカスは静かに首を左右に振る。
「この傷じゃ、今夜までもつか…傷なんて物じゃない、酷すぎる。縫合するだけで精一杯だった。情けないが私の手ではどうしようも…」
ルーカスは肩を落としてベッドの脇の椅子に腰掛けた。
城に運びこまれた急患の二人を見てルーカスはアルではなく、直ぐにレオの手当てを施そうとしたほどだ。
ルイスは、アルを診た時のルーカスの行動を見て、直ぐに悟った。
アルはもう助からない。
ベッドに静かに横になるアルを見つめると、ルイスはアルの冷たい手を握った。
血の気の引いた蒼白い手。脈を見ると血管が頼りなく透けて見える。
打ち返してくる力は限りなく弱く、ルイスは悲しげに目を細めた。