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[続]天地を捧げよ〜神剣伝説〜
第28章 女神の降りる丘
「あっ、見て皆!また山がっ……」
日中の忙しい時間だった。火山の麓にある集落。その村で働く女達に紛れ、幼い少女が山頂から噴き出す煙を怯えながら見上げていた。
「ただいま!今戻ったよ」
「おかえりなさい!」
山を見つめる少女の背中でその声の主達を村の女達が出迎える。
「すごい立派な雄牛!」
「そうさすごいだろ!族長が一発で仕留めたんだよ!これに乗せるのも一苦労だったさ」
後から牽いてきた荷車に集る女達に、狩りから戻ったばかりの女は少し得意気に語っていた。
短い袖から覗く二の腕は逞しく肉付きもかなりいい。その女だけに限らず狩りから戻った女達は皆、村で待っていた女達よりも見るからにガッチリとした肉体を持っていた。
「族長は?」
村の女達は尋ねた。
「後からくるよ!山菜を少し摘んでくるって!今夜は族長手製のこの牛の内臓を煮込んだ美味いスープが飲めるさ!」
ガタイのいい女の言葉に女達は、わあっと顔を嬉しそうに綻ばせていた。
雄牛は荷車の上でそのまま解体される。肉をそれぞれの部位に切り分けて並べると、保存用に細かく調理されていく。
塩漬け用・腸詰め用・干物用と、分けた肉を村の女達が手を加えていく中で、今夜の御馳走になる内臓の煮込み用の大鍋が準備されていた。