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[続]天地を捧げよ〜神剣伝説〜
第28章 女神の降りる丘
「皆!族長が戻ってきたよ!」
遠くから馬に跨がり駈けてくる姿を目にして、集落の入り口にいた女がそう声を掛けていた。
「族長!おかえりなさい!」
「族長!大きな肉をありがとう!」
村の皆が口々に礼を言う。
「ああ、脂ののった美味そうな肉さ。皆で食べるよ!」
族長は笑いながら栗毛の馬から降りる。真っ赤な布のバンダナを額に巻いたその族長の足元には先ほどの少女が駆け寄ってきていた。
「ねえ族長!山がまた煙をはいたわ」
高い声で騒ぐ。族長と呼ばれた女は眉を寄せてその山を見つめた。
「ああ、この分じゃ近い内にデカイ噴火が起きそうだ」
そう口にしながら族長は馬の小脇にぶら下げた山菜や野草の束を抱えて下ろした。
元が活きた火山だ。火口から上がる小さな噴火や火柱はそう珍しい物でもない。
だが、ここ数ヵ月……異常な程に噴火の回数が増えてきている。
増えてはいるのに火柱はとんと噴き上がることはなかった。
族長の表情を見つめ、少女の眉も八の字に下がる。不安を浮かべた少女を振り返ると族長はその少女の頭を撫でていた。
「火柱が上がる前に蓋をしに行かなきゃならないね」
「そんな大きな蓋はどこにあるの?」
少女はキョトンと目を丸くする。
族長の女はシ!っと口に指を当てて片方の目をつぶると人差し指を指していた。