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贄姫
第1章 壱
椿は、意識が戻った時
このまま寝ていれば良かったと思わずにはいられなかった。
「…なによ、これ」
畳の上の布団に寝かされ、
周りを御簾で囲われていた。
首だけもたげて凍りついた。
真っ白な着物と袴。
白は元来、喪に服す時に使われる色だ。
「…最低」
両手は頭上で縛り上げられ
足首も縛りつけてある。
身体についた札の呪縛で
思うように動けない。
もがけば、縄がさらに食い込んできて
気分を害した。
「動くなよ、無駄だから」
声のする方を見ると
周がいつもの落ち着いた表情で椿を見ていた。
「そこで高みの見物?」
部屋には椿と周と、彼の式しかいない。
外に感覚を向ければ
大勢の人間が控えている気配と
その奥から渦巻くような闇の気配がする。
「なんなのよ、もう…」
「悪かったな、今まで言えなくて。
お前も、何が何だかわかんないだろ」
ええ全くその通りです、と周を睨みつけた。
「これから話すことはもっと残酷だから
耳かっぽじって聞くんだな」
「縛られてて耳かっぽじれないから
あんたがほじくりなさいよ」
この期に及んで生意気だ、と周に頬をつねられた。
「痛い痛い! ばか! 人が動けないからって!」
あまりにもいつもの周すぎて
心の中の不安がしゅるしゅると消えていった。