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贄姫
第1章 壱
「だからさ、呪いなんだよ、英家のさ」
ポツリ、とつぶやく声音が心地よい。
「俺はチビの時にお前の話を聞かされた。
俺は力が強かったから、認められてお前の婚約者というていで、
17歳までの間は守護者として側にいたんだ。
だからなんでも知ってる。
お前が初めてオネショしたことも、
1人でトイレに行けなくて
何回もつきそったことも
初恋の相手にふられて
ギャンギャン泣きわめいてたこともな」
「そんなこと聞きたくないんだけど今」
「あの頃のお前は可愛かったのに
いつの間にかこんなクソ生意気になりやがって」
「それはそれは御愁傷様」
「それでも俺の役目は、お前を護ることだ。
お前の役目が贄姫であることと同じように
生まれた時からそう定められてきた」
贄姫。
その単語に椿は眉をしかめた。
「なんなのよ、それって」
周が椿の頭を撫でた。
椿が不安そうな顔をするときの周の癖だが
当の周は、その癖に気づいていないようだ。
「詳しいことは、わからないんだよ」