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贄姫
第4章 肆
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その日の夕食。
夕餉もそこそこに、椿は体調が芳しくなくて
早々に自室へと戻った。
母屋を中心に、英家は各それぞれの部屋があるのだが
力の強い術師や特別な椿、それに周は
母屋から渡り廊下を伝った先の離れに居住スペースがある。
椿の部屋は奥の暗の森の一番近くで
その鬼門の方角に周の部屋があった。
それぞれ、別の廊下を渡らないといけないようになっている。
そんなだだっ広い英家は
一般人が入れば迷子必須だ。
おまけに、呪術の道具やら
怪しげな人形、それに混じって
人ではないものがうごめいているので
相当に恐ろしい。
その中を、目をつむってでも歩ける若者は
周と椿くらいだろう。
その周が渡り廊下を歩いていると
どかどかと歩く瓊乱とすれ違った。
「お前も疲れているな。椿でも襲ってきたらどうだ?」
「退れ、げてもの」
「今度はゲテモノ扱いかよ。あっそ。じゃあ知らん。
だけどな、お前がやらないなら、
あいつの初物と避妊の呪は俺がやるからな」
瓊乱はにんまり笑うと
すたすたと歩いていく。
椿の部屋に行くのか、渡り廊下を曲がった。
「待て! 瓊乱!」
それに瓊乱がそれこそ待ってましたとばかりに
にやにやしながら振り向く。