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贄姫
第1章 壱
「なんで?」
「しばらくは生まれてきていなかったから
呪いが解かれたと思っていたんだ。
しかし、お前が生まれた。
調べようにも、文献は禁書庫の中で封印まみれで到底取り出せない。
ご両親も、他のみんなも、仕事をしながら呪いを解く方法をいつも探していた。
言い伝えによれば、守護者をつければ、ある程度は回避できるとある。
呪いを消せればいいのにな」
そう言って周が椿の襟元に指を置く。
指先が、彼女の素肌に触れた。
「ちょ、なに、やめてよ」
周の指がするすると下に動き
胸元が少し開かれる。
まだ冬が残る寒さが肌に触れる。
「やだってば、なにしてるの‼︎」
「忌々しい呪いだな」
椿の胸元に
うっすらと白い模様が浮かび上がっていた。
「白刺青。
誰かに刺青を彫られたわけでもないのに
生まれながらにして刺青が入った女子が贄姫とされる。
どれだけ、消そうとみんなが考えたことか」
「なんであたしなの?」
だだをこねたところで
周のまっすぐな瞳は変わらなかった。
「…なんで…?」
なんで、あたしなの?
声がかすれた。
周はまた、椿の頭を撫でた。
「そういう運命なんだ。
困難に立ち向かえる人間にしか
神様はそういう役割を与えないそうだ」
「そんな言葉に騙されるとでも?」
「お前って、ほんとそういうところが偏屈だよな」
周は、はだけた雫の胸元を整えた。
「そんな目で見るな。
勘弁してくれ…誰も、悪くないんだ」
受け入れろ。
周はそう、椿を見つめた。
その奥に、密かにいたわりと悲痛さが混じっていた。
「お前を護るための儀式だ。
だだをこねず、少しは協力しろ」
「いつも協力的じゃない」
どの口が言う、と周は椿の唇を
両手でつまんだ。
全力でジタバタもがいて彼の手をどかす。
もがく椿を面白い生物を見るような目で見ていた周が
ほんの少し表情を真剣にして椿の唇に自分の唇を乗せた。
あまりの出来事に椿が固まる。
ほんの一瞬だけ触れた唇は柔らかく
すぐに離されたそこから
周は深い息を吐いたと思うと
真面目な顔になった。