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贄姫
第4章 肆


どんなに美しい女を犯しても
こうはいかなかった。


―――これが、贄姫―――


口づけだけでこうならば。


―――犯したら―――


どれほどの快楽を得られるのだろうか。
瓊乱は、恐ろしささえ覚えた。
唇を離すと、椿が熱っぽい視線を向けてきた。


「どうした、そんな顔して…欲しいか?」


いらない、と小さくつぶやき
抵抗するのをあきらめたのか
そのまま目を閉じて眠ってしまった。


寝てしまうと、一時的に匂いは衰退するようだ。
それでもまだ、あの甘ったるく抗いがたい匂いは消えない。
胸の中で眠る椿は、
それだけ見れば、ただの人間だった。


見れば誰もがその美しさに感動する。
そんな女たちを、散々抱いて犯してきた瓊乱にとって
さして美人でもない
普通の人間の女にここまで心を乱されることは意外だった。


「……ん」


夜も更けたころ
椿がたまの着物の裾をぎゅっと握って、何かを呟いた。


「どうした?」


寝言にこたえてはいけない。
それは、知らないうちに契約となってしまうから。
だが、わざと瓊乱は答えた。


「あ……ま、ね…」


助け、て。


ぎゅっとしがみついてくる。
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