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贄姫
第4章 肆
空間の歪みから人型の妖が現れた。
椿は慌ててはだけた着物の前を合わせる。
布団から起き上がって後ずさった。
『なんだ、この匂いは…お前、さては…』
ひゅ、と軽やかに妖が椿の前に降り立つ。
『やはりそうだ、贄姫…!』
逃げる足を掴まれたのが最後
椿は畳の上をずるずると引きずられて
妖の前に引っ張られた。
『これはすごいご馳走だ…』
妖は椿の匂いに酔ったのか
ろれつが怪しくなった。
『素晴らしい…』
すると、その妖の周りから
わらわらと他の妖が出てくる。
それは椿の身体の半分ほどの大きさのものだ。
「え、なに、どういうこと…!?」
一気に数を増やした妖が
雫に襲いかかった。
「きゃぁぁぁあ! やだ! やめて!」
その小さい妖たちに無理やり
着物を毟り取られる。
抵抗しようにも力がうまく入らず
気がつけば裸で床に押さえつけられていた。
その一匹が、匂いに酔って
雫の耳に噛みついた。
「やだ! 痛いっ!」
その瞬間、妖がパタリと倒れてしまった。
「たま、なんなの! 止めてよ! たまっ!」
たまはそれを面白そうに見ていた。
「浄化したいんだろ? だったら、そのままされるがままにしてろよ」
もう、一匹浄化できてるんだから。
そう言って、倒れた小さい妖を
嘲笑うかのように見ていた。
その小さな妖怪は、シュルシュル音を立てて
煙になって散ってしまった。