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贄姫
第1章 壱


「おとなしくして。
これから、始まるんだから」


「…周…今…」


その椿を無視して、周は続けた。


「贄姫は、17の齢で必ず儀式を受ける。これは掟だ。
これを破って、生きながらえた贄姫はいない。
いわば、これが確実に命を守る方法だということだ」


天井から吊るされた御簾が
夜気に揺れた。


「まず、守護者となる高等な妖を呼び出す」


立ち上がった周は文言を唱えながら椿の周りに
見えない陣を形成した。


ーーーああ、始まるのだーーー


椿はぼんやりと覚悟を決めた。
わけのわからない恐怖に身をうち顫えることはしなかった。
きっと、周がいるから大丈夫。
そんな風に、たかをくくっていたのだ。


だから、意外と心拍数も落ち着いたまま
周が唇を重ねたところを
くすぐったく感じながら噛んだ。
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