この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
贄姫
第4章 肆
「やっと言ったな…」
鬼の口づけが
こんなにも甘いと
誰が知っているだろうか。
椿の意識は
瓊乱の与える口づけに集中した。
「もういいだろ。
お前もすでに精気で満たされてる。
さっさと俺の糧になれ」
瓊乱が椿の蜜壺に張り付いたままの妖の頭を
むんずと掴んで引き剥がす。
ねじ曲がった空間から金棒を取り出すと
その妖めがけて一直線に振り下ろした。
『ぐっ…ぎゃぁぁぁ!』
断末魔の悲鳴を上げて
妖が霞になって散った。
「まぁ、悪くない味だな」
瓊乱は勝ち誇ったように呟く。
金棒で吸い尽くす精気が、瓊乱の糧だ。
小さい妖たちが、慌てて退散していく。
その一つ一つを潰して
妖たちが居なくなってから
ぐったりした椿を抱き起こした。
「瓊乱もうダメ…。
身体が言うこと聞かないの…。
なんで?
嫌って思ってるのに…、何かされるたび
身体が重くて苦しくて、頭がぼうっとしてきて…」
身体中の疼きが止められない。
苦しくてどうしていいかわからなくて
椿の目から涙が落ちた。
「呪いだな。
お前は甘い香りで妖たちを引き寄せるし
身体は快楽に逆らえなくなるようだ。
安心しろ、俺がもっとダメにしてやる」
力が抜けた彼女を軽々と抱き上げると
瓊乱は部屋を後にした。
どこに行くかは
椿はなんとなく分かっていた。
瓊乱が向かった先は暗の森。
しんと静まり返った森は
生暖かく、それでいて清廉な空気に満ちていた。
迷うことなく
瓊乱は暗の森の滝へと到着し
滝壺の中に入る。
腰まで滝壺に浸かると
椿を下ろした。
だが、消耗し尽くしまだ立てない彼女は
瓊乱にしがみつくのさえやっとだった。
椿を支えながら
瓊乱はここぞとばかりに
勝ち誇った顔で椿の顎を持ち上げる。