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贄姫
第4章 肆
「瓊乱…もぅ…」
ダメ、という言葉を言わせなかった。
息ができないくらい
深く口づけを交わす。
唾液に混ぜ込んだ精気で
椿の身体に力が戻り始めていた。
瓊乱は椿をきつく抱きしめ
口づけをしたまま、
滝壺の奥へと向かった。
「んっ、瓊乱っ…」
唇を離すと、椿を抱きかかえる。
さらに滝に向かって歩き出すと
そのごおごおと水しぶきをあげる
水流の横から滝の裏へと入った。
「椿…」
また口づけを再開する。
我慢できないほどに
椿の身体からは芳香が漂っていた。
滝壺の後ろに回ったのは
そこに窪みがあるからだ。
窪みと言っても
洞穴のようになっている。
奥行きはそれほどないが
部屋の大きさで計算してみれば
充分な広さになる。
そして、そこは大昔から呪術が行われたいた場所であるから、足元の床は削られて滑らかだった。
2人はそこに辿り着くと
瓊乱は上から羽織っている打掛を脱ぎ
地面に敷いた。
そこに椿を押し倒す。
抵抗しようにも身体が抗えず
逆に瓊乱にしがみつくようにして
口づけを求めた。
唇を重ねあいながらも
瓊乱は器用に着物を脱いでいく。
その手が椿の腕を掴んで彼の首に回した。
椿はされるがまま、瓊乱の首にしがみつき
瓊乱も椿をぎゅっと抱きしめる。
初めて触れる瓊乱の素肌の感触に
椿は逆らえなくなるほど理性が奪われるのを感じた。
これが呪いなら、なんて非道いのだと思わずにはいられなかった。
どれくらい口づけをし合っていたかは分からない。
ただ、気持ち良さだけで満たされ
身体中が疼いた。
「椿…」
瓊乱は椿の身体に口づけを落とし始めた。
時折見える目の色が
見たこともないほど宝石のように紅く
美しすぎてこの世にいる気がしなかった。
焦げ付くようなその目線に耐え切れず
目を閉じれば
いつの間にか目の渕に溜まっていた雫が流れ落ちた。
「…泣くな。これ以上…惑わせるな」