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贄姫
第1章 壱

自分の人生は、はなから決められていると言われて
一体この世界の誰が納得するのだろうか。


「バカじゃないの…。呪いなんて、今の時代にあるわけないじゃん」


17歳の誕生日のお祝いに
幼い頃から言われていたそれを
改めて恐ろしく真面目な顔で言われたものだから
椿は思わず両親に向かってそう吐いた。


「椿、きちんと聞きなさい」


「わざわざ呼び出しておいて、話ってそれ?
あたし、そんなの耳タコどころじゃなくて
耳が腐る程聞いて来たんだけど?」


バカバカしいという顔で、椿は立ち上がって
親を見下した。


まだあどけなさの残る顔は
美人というよりかは可愛らしい。
髪は光を吸収するかのごとく黒々と長い。


黒目がちな瞳は挑戦的で
凄むと無駄に迫力がある。


「それって、呼び出してまで誕生日に言う話?」


その質問に目の前に座った椿の両親は黙り、シワを寄せた。
椿は両親とは離れて暮らしていた。
なんでも全国津々浦々忙しい両親は滅多に家にいない。
わざわざ誕生日に帰ってきたかと思えば
そんな話をされるとは思ってもみなかった。


「なに、2人して疲れきった顔して…。
またなんか変なの出たの?」


さらに押し黙る2人との沈黙は辛いものがある。
椿が痺れをきらしたその時
夏の気だるい空気を割くように
颯爽とした足音が聞こえて来て
部屋の前で止まった。
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