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贄姫
第2章 弍


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目が覚めた時。
まるで千年の眠りから覚めたような
不思議な感覚だった。
身体中が痛みとダルさで軋むようだ。


「…あ、たし…」


数回まばたきをすると
やっとここが自宅で
奥の間だということに気づく。


「気がついたか?」


ハスキーな声がして、
見れば絵画から抜け出てきたかのような美男子がいた。
瓊乱だ。


喉がカラカラで声が声帯でもつれた。
起き上がろうとしたが力が出ず
首をもたげるのも億劫だった。


そうしていると、
瓊乱がどすどすと近づいてきて
椿を覗き込む。


「ほら、飲め」


出されたのは、湯飲みに入った白湯。
意外な優しさに、椿は少し驚いた。


「起きれない……」


「はあ? なに軟弱なこと言ってやがるんだ。
たかだか一週間寝込んだくらいで
へこたれてるんじゃねぇよ」


「いっ……」


一週間?
一週間も寝込んでいたなら、この身体のだるさにも納得できた。
学校休んじゃったんだなという
なんとなくの罪悪感と
ぐるぐるとする脳みそ。
誕生日を祝ってもらえなかったという悲しみと
目の前の男に対する怒り。


感情が渦巻いて、今にも吐きそうだった。
しかも、起き上がってすぐに、この罵倒。


むっとした顔をしたのがばれたのか
男もつられて眉根を寄せた。


「お前はいつもしかめっ面なのか?」


そういうや否や、白湯をぐび、と飲んでしまった。
椿が驚いてあ、という顔をすると
瓊乱は妖艶ににやりと笑い
あっという間に唇をふさがれた。


もがこうとして伸びた手は
瞬時に押さえつけられる。


柔らかな彼の唇にこじ開けられて
白湯が少しずつ椿の喉に流れ込んできた。
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