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贄姫
第2章 弍


やめてという言葉は、
流れ込んでくる白湯とともにのどの奥へと戻された。
ぬるく、まろい液体は
椿の体に染み渡る。
よっぽど枯渇していたのか
唇が離されるのが、若干ためらわれた。


「何だよ、そんな顔して…。もっとほしいのか?」


それに答えるのは癪だった。
だが、体は正直だ。
欲しくて、のどが鳴った。


「下さいって言えよ。そしたらやるよ」


「冗談じゃないわ」


代わりに出てくるのは、思ってもみない言葉。


「ったく、いけすかねぇな。可愛げがないと、
あの男にもそのうち愛想つかされるぞ」


「大きなお世話よ…」


と、そこまで言って、周のことを思い出した。


「…周は?」


その名を聞くと、瓊乱は眉根を寄せて不快そうな顔をした。


「生きてるよ、向こうの部屋にいる」


慌てて周の所へ行こうと、椿はばっと起き上がったのだが
一週間も寝こけていただけあって
身体に力が入らずに崩れ落ちた所を瓊乱に抱きとめられた。


「…周の所へ行かせて」


生きていてよかった。
だけど、あれだけの傷を負ったのだ。
どうなっているのか、自分の目で雫は確かめたかった。


「嫌だと言ったら?」


「ふざけないで! 早く行かせて!」


椿の声に、瓊乱の目が黒から赤味を帯びてきた。
椿は、その変化を、少し恐ろしく感じた。
赤い目なんて、まるで鬼のようだった。


「なによ…」


「ふざけてるのはお前だろ、椿」
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