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贄姫
第2章 弍


「周っ!」


襖を開けて入ると、そこにびっくりした顔をした周がいた。


「椿、目が覚めたのか?」


その彼に飛びつく。


「わ、ばか、危ない」


「よかった…生きてる…!」


椿はあまねの心臓の音を確かめた。
ドクンドクンと、確かに脈を打っている。


「もう起きて大丈夫なの? 怪我は? 痛いのは?」


周の身体中をペタペタ触っていると
その手をどけられた。


「椿、お前、着物…」


言われて、自分がずいぶんと乱れた格好をしている事に気づき
火を吹くくらい顔が熱くなる。
はだけて太ももも露わになっていた裾と前襟を
慌てて直す。
周はかなり気まずそうにそっぽを向いていた。


「…と、ごめん…」


「いや…」


2人でなぜか沈黙していると
ハスキーな声が楽しげに聞こえてきた。


「なんだ、いまさら恥ずかしがって…。
意識してんのか?」


意地悪な含み笑いに満ちたその声に
椿はカッとなって振り返る。


「あんた、デリカシーってないの!?」


「ないね、あいにく人じゃないもんで」


瓊乱はつかつかと寄ってくると
椿を後ろから抱きしめてその肩に顎を乗せた。


「…俺を召喚したそこの術者が悪い」


椿は瓊乱をどかそうとしたが
そこは圧倒的な力の差で全く振り解けなかった。
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