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贄姫
第2章 弍
椿は、どうにか動かせる手で、瓊乱の額から生えている角に触れた。
ゴツゴツとした感触は、人のものではなかった。
「椿、これを!」
隙を見てとっさに呪符が周から投げられた。
椿はその呪符をつかんで瓊乱の腕に貼り付けた。
じゅ、と皮膚が焼ける音。
「小娘、やりやがったな…」
「諦めなさい、角を封じさせてもらうわ」
「いいいのかよ。封じたら、俺の力は半減するぞ」
「構わない。そうなってもいいように俺たち陰陽師が椿の周りにいるんだ。
お前だけに護らせるほど、俺たちだって諦めたわけじゃない」
椿の首筋を痛みが襲う。
悲鳴を飲み込んで、呪符を瓊乱の角に押し付ける。
じゅ、っという焼ける音。
瓊乱が、短く舌打ちをした。
そこに、椿が触れる。
「こんな小娘でも角を封じるくらいはできるのか…」
「バカにしないで。これでどう?」
呪符が瓊乱の角に焼き付けられ
それを押し付ける椿の腕を鬼が掴んでいた。
いつの間にか椿の首筋には瓊乱の牙が刺さった跡があって
傷口からは血が流れ出ていた。
「お前、この俺にそんなことしてただじゃ済まねぇからな…!」
椿はへし折られそうになる腕の痛みを
歯を食いしばりながら笑ってみせた。