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贄姫
第2章 弍


椿の目が覚めたのは
さらに2日後、美しい満月の夜だった。


椿が目を開けると
そこはやっぱり見慣れた奥の間の天井で
初春の肌寒い空気が部屋の中に広がっていた。


「起きたか」


そう呼ぶ声は独特のハスキーな掠れ声。
庭に面した障子を開けて
まるで人形のように整った、髪の長い男が
月明かりの下で空を眺めていた。


初めて見た時の毒々しさは、ほとんどない。
流れ吹く風に前髪を揺らす様は
この世のものではない美しさだった。


「…瓊乱」


椿は起き上がる。
今回は起き上がることができ、若干驚いた。


「また荒療治するのも面倒だからな。
寝てる間に精気をいれさせてもらった」


どうりで身体は軽い。
疲れも取れて、すっきりしていた。
ただ、寝込んでいた体力は落ちたのか
若干の気だるさがあった。


「…だから動けるのね」


もぞもぞと布団から這い出して
瓊乱の隣に座った。


「お前との口づけは美味いからな」


そうさらりと言われて
椿は顔が真っ赤になった。
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