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贄姫
第2章 弍


「く、口づけ!?
あんた、あたしが寝ている間に何したのよ!」


思えば、椿の初めての唇を奪ったのは
他の誰でもない、この目の前の美しい鬼だ。


途端に恥ずかしくなって
そっぽを向いた。
なんで、こんなやつに初めての大切なキスを奪われなきゃいけないんだろう。
悔しさと、情けなさと、行き場のない怒りに打ち震えた。


「なんだよ、今さら。あんなに欲しそうにしてたくせに」


「してない!ばか!」


「馬鹿とはなんだ! こっち向け」


角さえなければ、見た目は殺人的にかっこいい。
そして、角を封じたために、
禍々しい気配が収まっているため
それは、ほどよく人に見える。
そのため、こんなやつと唇を触れ合ったかと思うと
椿の顔は今になって発火しそうになった。


「向けってば」


「痛っ…!」


髪の毛を引っ張られるまま
椿の胸の中に背中から倒れこんだ。
上から真っ黒な瞳が覗いてくる。


「おとなしくしてろよ。それくらいが女は可愛い」


「誰があんたなんかに、おとなしくされるもんか…!」


じたばたともがくと
あっという間に着物の裾をめくられて
椿は悲鳴をあげた。
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