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贄姫
第2章 弍
「当たり前だろう。婚約者という体でお前を護っていたんだ。
代わりがあらわれれば、まがいものの俺との約束が無くなるのは当然だ」
「で、でも!」
ずっと
ずっとずっと一緒にいた。
「そんな、いまさら…」
その椿の頭をぽんぽんと周は優しく撫でた。
「安心しなって。居なくなるわけじゃないんだから。
英に仕える身なんだ、これからもずっと一緒だ」
「ほんとに…?」
「ああ。嘘はつかない。それに、椿。
好きな奴くらいいるだろ? もう、恋愛に悩まなくていいんだぞ」
そんなことはどうでもいいいのだが、不安になって
思わず周の裾にしがみついた。
「大丈夫だから」
そう言った瞬間、森がざわめいた。
周はとっさに椿を背中の影に隠して呪符を出す。
「誰だ」
「こんな所に、森があるなんてね」
そう言って、瓊乱がひょっこり顔を出した。
「な、んでお前…入ってこれた…?」
周の驚く顔を見て
瓊乱は満足そうに肩をすくめる。
「…お前、何か隠してるな?」
「隠してなどいない。俺は俺のままだ」
しっかし、この森は澄んでるなー。
そう独りごちながら
瓊乱はその辺を散策し始めた。