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贄姫
第2章 弍


結局、学校には行けずに
しばらく落ち着くまでは休むことにした。


体調は徐々に回復しているのだが
まだ身体中が以前のように軽やかではない。
体力低下を恐れて、広い敷地内で
散歩を朝晩するのが椿の日課になりつつあった。


瓊乱は居るのかいないのか、時々ちょこっと顔を出しては
ニヤニヤ笑って消えていき、どでかい酒瓶を持って帰ってきて
一人、縁側で花見酒をしている時もあった。


「あんた、本当に自由で図々しいわね。
いっそ清々しいわ」


邪気がなくなり、角もしまいこんでしまったがために
美男子が着物で歩いているようにしか見えない。
その姿に、椿は見かける度に棘を吐いていたいたが
またもや無理やり口づけされそうになってからは
慎重に接していた。


家は落ち着きを取り戻しつつはあるものの
まだまだ家自体の補修も、
結界の補修も追いついていなかった。
だが、とりあえずは瓊乱がいるということで
椿はいつもの自分の住んでいる離れに戻った。


歩くのにも飽きたので少しジョギングをした。
春先の夜は薄ら寒いのに走ると身体が火照った。


何もない日常がこれほどまでに幸せだとは思わなかった。
両親は、仕事があるため、また出て行ってしまった。
周と瓊乱がいるから大丈夫だと。
呪いを解く方法を探りながら
また全国を歩き回るのだ。


夜になると、椿は寝巻きの浴衣に着替えてふかふかの布団に潜り込む。
昼間干しておいた布団はお日様の匂いがして
心地よい疲労感の中、眠りについた。
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