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贄姫
第2章 弍
「椿、俺を呼べよ。
それともそいつにやられたいのか?
初めてでも、孕むかもしれないぞ」
陰茎が打ち付けられる寸前。
「か、瓊乱…!」
椿の歯の根が合わない口から叫び声に近い音が漏れた。
それに、口の端を持ち上げた美しい鬼は
天狗を一瞬にして吹き飛ばした。
「あーあ。せっかくの見世物だったんだけどな」
ちっとも残念そうな顔ではなく
瓊乱がペロリと舌なめずりをした。
「この美味そうなやつはな、俺のもんだ。
悪いな、天狗さんよ」
瓊乱の制止に、天狗はドロンと煙に包まれる。
「逃がすか!お前の魂もらうぞ!」
瓊乱はそう言うと、歪む空間から巨大な金棒を取り出して
その煙めがけて重たい一撃で凪いだ。
『っ…ぎゃぁぁぁあ』
天狗は悲鳴をあげてカラスの姿になると
一目散に逃げ出していった。
後には、金棒を持って夜空を見上げる美しい鬼がいるだけだった。
「……消滅させたの?」
しばらく経ってから
椿が恐る恐る口を開くと
いや、というハスキーな声が返ってくる。
「精気を奪っただけだ。
まだ生きているが、当分は復活できんだろうな」
よかった、と椿は深く息を吐いた。
「なんだよ、あのまま襲われたかったってか?」
「ふざけないで!
殺すなんて…理解できないだけ」
「お前だってものを食うだろ。
じゃなきゃ、肉体は維持できない。
俺たちはそれが精気なだけだ。
お前だって、殺してるのは一緒だ。
きれいごとだけでこの世の中が片付くなら
とっくにみんな成仏してる」
瓊乱は、そう言うと椿の腕を掴んで持ちあげた。
もう片方の手で顎を持ち上げる。
「お前が生きているのも魂を食ってるからだぞ、小娘。
それに、俺が護ってやっているからだ」