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贄姫
第3章 参
「へーえ。お前、ずいぶんといいの使役してるんだな。
そいつら動かすの、容易じゃないだろ」
「椿を護ると決めた時から俺は鈴鹿と葛を使役している」
彼らは筆頭陰陽師である周が使っているが
元は弦総(つるぶさ)家に仕えている身だった。
殊勝なこって、と瓊乱は肩をすくめた。
「お前みたいなのがそうやって努力してこの家の者が頑張っているのに
あの小娘、何も気づいていないんだ。
自分の目の前で妖を殺すのが嫌だとかそんな我儘なやつだぞ」
「いいんだよ。椿はそのままでいいんだ」
「お前たちがそうやって甘やかすから
いつまでも世間知らずなんだ」
「椿は特別なんだ。
命を狙われるなんて。そんな運命なんだぞ。
命の保証さえないんだ。
それに比べれば、俺やこの家のみんなのやってる事なんか
たいしたことはないんだ」
それにた瓊乱は押し黙った。
周は悟ったような顔をしていてそれが妙に瓊乱の琴線に不快に響いた。
「じゃあ、余計だな。
世間知らずのお姫様に、世間を、目に物を見せてやる時だ。
あいつが大いに傷つくのをそうやって黙って見ていろ。
俺はあいつの守護者だ。
護ってやる代わりに、もらうもんはきちんといただくからな」
何をこんな自分でもむきになっているのか分からないが
瓊乱は恐ろしく機嫌を損ねた。
「くそっ」
障子を乱暴に開けると、足音も大きく立ち去る。
「おい、どこ行くんだ!」
周の呼びかけに、瓊乱は美しく振り返る。
「胸くそ悪いから、その辺の女犯してついでに妖喰いに行ってくるんだよ!
あんな甘ったるい匂いさせてんのに
襲えなくて精気も奪えずでこっちは腹も減って欲求溜まってんだ!
契約したなら精気を分け与えることくらい教えておけ!
おかげで空きっ腹もいいとこなんだよ!」
八つ当たりかよ、と周は目を丸くした。