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贄姫
第3章 参
「っ…」
呪符がシュルシュルと音を立てて
椿の身体に完全に取り込まれると
刺青も首の痣も完全に見えなくなった。
と、同時に椿の身体が傾いだ。
針を抜き、慌ててその身体を抱きとめる。
触れる素肌は滝の水によって冷やされ
まるで人形のような冷たさだった。
「起きろ、大丈夫か?」
殊勝な態度の割に椿は術に弱く
掛けられればすぐに効いてしまう。
術を発動させるのも下手くそで
見かねた周が二度とするなと
怒った事は一度や二度ではない。
せめて、掛かりやすい体質だけは慣らせて
ある程度はどうにかしたのだが
強い術はやはりダメだった。
この刺青消しの術は頻繁に掛けるので
反動も慣れているはずなのだが
今日に関しては相当反動が大きかったのだろう。
周に倒れこんだ姿からは疲れがにじみ出ていた。
「思春期男子の腕の中に
裸で倒れこむかよ、普通…」
こう見えて椿は男子生徒の間から絶大な人気がある。
強烈なお嬢様キャラがどSな発言と相まって
踏まれたいとか、罵倒されたいとか、
Mっけのある気弱な男子から
組み敷いてやりたいと考える強気な男まで幅広く
根強い支持があるのだ。
彼らがこの姿を見たら
速攻鼻血まみれで倒れる事間違いない。
そんな事を思いながら、
周はいわゆるお姫様抱っこの形で抱き上げると岸へと歩いた。
岸に下ろそうとしたところで椿が目を覚ました。