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贄姫
第3章 参
「起きたか?」
「周…」
椿はそのまま、眠そうな顔で周の首に腕を回して抱きついた。
「周、あたし…昨日の夜…」
「うん…」
「……怖かった……」
椿がさらに強くしがみついてくる。
抱きしめる代わりに、頭を撫でた。
「あんな強い妖を、初めて間近で見て
自分でどうにかしたいって思ったのに
なんにもできなかった」
「……」
「周たちは、あんなのに、いつも向き合っているのね」
相当怖かったのか、やっと落ち着いたという風の彼女に
周は声をかけることができなかった。
「俺たちは慣れっこだ。気にするな」
うん、とうなずき、椿はもうしばらくだけ
この温かい心臓の音をさせている幼馴染に甘えた。