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贄姫
第3章 参
ここは、学校。
妖などいない世界。
まぶしく、普通の人間が暮らす平凡な日常。
異端である千代菊と壷糯は
自分たちの身の置き所をわかっているのだ。
階段を上って行ったところで
たむろしている生徒たちが2人を見て驚き
一瞬静まり返った。
そのあと、ひそひそと声があちこちから聞こえたり
奇異なものを見る視線が突き刺さる。
「ちょっと、周君が来てるって!」
駆け出して行った女子生徒が
にぎやかな教室にそう言い放っているのが
驚くほど丸聞こえだった。
その集合、とでもいうような呼びかけの後から
黄色い声がしたかと思うと
何人もの女子生徒たちが教室からわらわらと出てきた。
「周。あんたって妖だけじゃなくて人間の女の子に大人気ね。
まるで動物園の動物になった気分でしょ?」
その周の後に続いて歩いていた椿が
眉根を寄せてそう言った。
それには周は取り合わず、教室へと向かった。
「周君、具合は?」
「周君、ずいぶん休んでたけど、大丈夫?」
あちこちから声をかけられて
それに彼はいちいち「ああ」「大丈夫」と答えていく。
根が真面目な奴って大変だわ、と椿はそれを白い目で見ていた。