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贄姫
第3章 参
「……ここね」
言われた通り、2つ目の教室の入り口には
現国準備室のプレートがあった。
ノックをして中に入ると、古い紙のにおいが充満していた。
昼間だからか、蛍光灯はついておらず
半分開けられたブラインドから、ほんの少し光が漏れていた。
薄暗く、埃っぽい部屋。
さっさと用事を済ませたいと思った。
「田上先生、英です、呼びましたか?」
しかし、声はない。
椿は眉根を寄せた。
「先生?」
すると突如後ろのドアがバタンとしまって
ガチャンと鍵がかけられた。
驚いて振り返った時、入り口のドアの陰から
田上がぬ、と出てきた。
「……先生、何か用事ですか?」
椿は冷静に、そう尋ねる。
田上の形をした闇が笑った。
『危ない、椿様!』
千代菊の声に、椿はとっさに後ろに下がった。
が、そこに積み重ねられていた本の束に引っかかって、尻餅をつく。
その椿の目の前を、田上が振り下ろした辞書が通り過ぎて行った。