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贄姫
第3章 参
椿が、ごくんと水を飲み込む。
ゆっくり流し込んで、全部飲み干した。
唇を離すのが、周はためらわれた。
「…もっと飲むか?」
衰弱した椿がその問いに瞬きで答える。
もう一度、口移しで水を飲ませる。
柔らかな唇が
水を欲してかすかに動く様がいじらしくて
このままずっとこうしていたいとさえ思えた。
暗の森の水が効いたのか、顔色が少し良くなる。
周は現国準備室から椿を運び出した。
『主様、どこへお連れするつもりですか?』
「とりあえず保健室だ…」
周が保健室に椿を運び終わった時
ちょうど予鈴が鳴り響いた。
「あら、私この後出ちゃうんだけども…」
保険医の先生は
倒れた椿をベッドに寝かせてから
どうしよう、と首を傾げた。
「お年頃の男女二人をここに置いてくなんてできないけど。
…でも、あなた達はもう一緒に住んでるもんね?」
「兄弟みたいなもんです」
だよねぇ、と保険医のおっとりキャラで有名な先生は
ケラケラと笑った。
「じゃいっか。みんなそこ分かってるしね。
出て行く時戸締りだけしてもらっていい?」
「分かりました」
先生はヒラヒラと手を振って出て行く。
見送って、保健室の入り口のドアの鍵をかけた。
呪符を貼って結界を形成すると
電気を消して椿の寝ている布団の脇に腰を下ろした。
そこでやっと、周は一息ついた。
「心配させるなよ…」