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贄姫
第3章 参
まだ顔色のよくない椿の頬に触れる。
涙の跡が頬にあって、周はそれを指で拭き取った。
先ほどの椿の姿がまぶたの裏にこびりついていた。
『これから、椿様はこんな事たくさん起こってしまうのでしょうか…?』
千代菊が心配そうな顔をした。
「…そのために、俺やお前がいる。
そして、あの鬼もだ…。
今日は千代菊、ありがとう」
めっそうもない。と千代菊がかしこまる。
『わたくしがついていながら…こんな事になってしまいました…』
「いなければ、もっと酷かったかもしれない」
椿を思うと胸が苦しく張り裂けそうになった。
周はふとんから出ていた椿の手を握りしめ
優しく口づけした。
「どうか…」
それ以上の言葉が見当たらず
周はしばらくそのままずっと椿の手をただ握りしめていた。