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贄姫
第3章 参
「すまない。俺がついていながら、椿を危険な目に合わせたのは事実だ」
『主様、謝ることなどございません!
もとはといえば、こいつが付いていないのがいけないのです!』
「ばっか野郎、気を遣ってやったんだよ。
ここでは妖は普通に存在するが、学び舎で俺たちは異端の存在だ。
ただでさえお前ら目立つんだろうから
さらに俺が暴れて騒ぎを大きくしたりでもしてみろ。
妖にたちまち狙われちまう。
それに……」
瓊乱は目を細めて、にやりと笑う。
「それに、たまには、2人で居たいだろ?
お前の気持ちなんぞ、分かっている」
それに周はほんのかすかに眉を動かしただけだった。
「だから託したのに、あのざまはなんだってンだよ。
そこの使役してるやつが居た居ないとかじゃない」
「策を練る。帰れ」
周のその声に、葛が悔しそうに瓊乱をにらんで消えた。
瓊乱は酒をもう一杯飲むと、ふんと気高く鼻を鳴らしその場を後にした。
あんな態度で口調なのに
あまりにも美しすぎるために品がよく見えるところと
いやにい人間臭いところが、瓊乱の不思議な点だった。