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忘れられない指
第11章 はじめての夜
「パンのお供はラタトゥイユでございます。
 咲子特製!っていうか、私の得意料理、この前のハンバーグとこれだけ、なんだ」

他にも作れるけど、自信を持って披露できるのはその2つくらい。
こうして彼氏もできたことだし、これからは料理もがんばらないと。

「それだけでもたいしたもんだよ。レパートリーは徐々に増やせばいいじゃない?
 そのほうがオレも楽しみだ。次は何かなって」

「凌空さんはほんと・・優しいね。私、がんばろう!
 おいしいって褒めてもらえるような料理がたくさんできるように、がんばる!」

鍋の中から立ちのぼるトマトの匂いに、2人して顔を近づけた。



出来上がったラタトゥイユと凌空が切ってくれたフランスパンを並べて
2人の晩御飯の始まり。
凌空は冷蔵庫からワインを取り出してきた。
私はまだ、飲んだことがない。

「どう?飲んでみる?」

あける前に聞いてくれた。
私は首を横に振った。だって、もし酔っちゃったらいやだもん。
今夜は、今夜こそは・・

「また今度にする。今夜は飲みなれたカクテル缶とビールでいいよ」

「そう?じゃあこれはとっておこうね。オレもビールで。
 あ、でも今夜はそんなに飲まずにおくよ。だって、ねぇ?」

やっぱり凌空も・・同じことを考えてるようだ。
初めて2人で過ごす夜。朝までずっと一緒にいられる夜・・
ほんとうのメインディッシュは・・・

「さぁ、カンパイしよう。まずはビールで」

甘い夜への期待を込めて、缶と缶をぶつけあった。
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