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忘れられない指
第20章 思い出をかかえて
式には出られない。
そうメールがきたのは式の2ヶ月前だった。
こうなるだろう、と私はぼんやりとだがそう思っていた。
たぶん彼は式には来ない・・
そんなふうに思いだしたのは、
孝明がバンコクに行ってからまだ1ヶ月しかたっていない頃に、
凌空のところへ私宛の国際便が届いた時からだ。
少し重さのあるその箱を開けてみると、
白い塊が入っていた。
タイシルクの生地だった。
添えられていたカードには、
「デザイナーの咲ちゃんへのプレゼント。よかったら使ってください」と書かれ、
ミルク色の少しハリのある生地は10メートルもあった。
ドレスのサンプルができ、そろそろ生地を探さなければという
絶妙のタイミングに送られてきた生地は、自分のイメージにぴったりのものだった。
凌空は、ただただ感心していたが、
私はこの短いメッセージから、もしかしたら孝明は
式には出ないつもりでいるのではないかと読み取った。
なぜなら、仕上がったドレスを見られることについて何も触れていなかったから。
男だから長々としたメッセージなど気恥ずかしくて書かなかっただけなのかもしれないが、
私にはそうは思えなかった。
結果、私の不安が現実となったのだ。
そうメールがきたのは式の2ヶ月前だった。
こうなるだろう、と私はぼんやりとだがそう思っていた。
たぶん彼は式には来ない・・
そんなふうに思いだしたのは、
孝明がバンコクに行ってからまだ1ヶ月しかたっていない頃に、
凌空のところへ私宛の国際便が届いた時からだ。
少し重さのあるその箱を開けてみると、
白い塊が入っていた。
タイシルクの生地だった。
添えられていたカードには、
「デザイナーの咲ちゃんへのプレゼント。よかったら使ってください」と書かれ、
ミルク色の少しハリのある生地は10メートルもあった。
ドレスのサンプルができ、そろそろ生地を探さなければという
絶妙のタイミングに送られてきた生地は、自分のイメージにぴったりのものだった。
凌空は、ただただ感心していたが、
私はこの短いメッセージから、もしかしたら孝明は
式には出ないつもりでいるのではないかと読み取った。
なぜなら、仕上がったドレスを見られることについて何も触れていなかったから。
男だから長々としたメッセージなど気恥ずかしくて書かなかっただけなのかもしれないが、
私にはそうは思えなかった。
結果、私の不安が現実となったのだ。