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忘れられない指
第3章 恋のすすめ
「ねぇ、マスターって、子供いるんですか?」
バツイチ、というのは常連客が話しているのを聞いて知った。
年齢も常連客から聞いたのだが、これは本人に直接確認できた。
だが別れた奥さんとのことはさすがに聞くのはためらわれた。
でも、今夜みたいにムスメ代わりに思ってるなんて聞いちゃったら
勇気を出して真相を確かめたくなった。
「・・いるよ、1人」
そう言うと、流しっぱなしになっていた水道の蛇口をギュッとひねって水を止めて
手を拭きながら私と孝明の前に立った。
「別れた妻と一緒に暮らしてる。もうすぐ二十歳になるかな。
そう、咲子ちゃんとあんまり変わらないんだよ」
カウンターに手をついて、でも視線は私たちを通り越して宙を見ながら
マスターは語った。
「だからね、咲子ちゃんを見てると娘みたいに思えてね。
自分の子にはなんにもしてやれなかったから・・
だからかな・・なんか咲子ちゃん見てると面倒見たくなるのよ」