この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
忘れられない指
第3章 恋のすすめ
凌空と史彦の前にビールが、孝明の前にはモヒートが、そして
私の前に新しいカンパリオレンジが置かれたところで4人の声がハーモニーを作り出す。
グラスの音が伴奏になる。
「今日もお疲れ様でした!」
グラスが合わさると小さなしぶきが私の手を濡らす。
それをペロリとなめる姿を4人の男たちは笑った。
「さっきさぁ、マスターがせっかくオレらを恋人候補に推薦してくれたのにさ、
咲子ちゃんたら誰のこと?なんてとぼけちゃってさ」
「おっ!なになに?聞きづてならないじゃないの。
恋人候補ってなによ?」
「おまえ声デケぇよ!」
頭のてっぺんから突き抜けるような凌空の声に、史彦が顔をめいっぱいしかめた。
男達の圧迫感から逃れるように、私は席を移動した。
一つ椅子をあけて、カウンターの真ん中あたり、マスターの正面へと座りなおした。
「そっちで勝手にやってちょうだい!」
人をネタに盛り上がってる男達より、
静かに耳を傾けながらおだやかに笑う大人の男の前を選んだ。