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忘れられない指
第4章 決意、そして失恋・・
「咲子ちゃん、ご飯はもう食べたの?」

相変わらず、世話焼きな父親みたいに子ども扱いする。

「はいはい、食べましたよぉ。それも久しぶりに自分で作ってね。
 マスターに言われる前にちゃんと栄養とれるようなメニューでね」

「おぉ、えらいじゃない。じゃあご褒美に・・」

・・なによ?子供じゃないんだから!・・

「酒の前にデザート、いかが?美味しいケーキがあるんだよ」

「えっ!ケーキ?わぁ食べたい!」

立ち上がって喜ぶ私を、あの女性が見ているのがわかった。
顔を向けると涼しい微笑みで目を細めていた。

マスターはその女性に微笑みかける。
今まで見たどの表情よりも、優しい眼差しで・・

「彼女がね、手土産に持ってきてくれたんだ。
 咲子ちゃんの話したらね、ぜひ食べてもらいたいって」

言うとすぐに背中を向け、冷蔵庫の中に顔をつっこむようにして
中から箱を取り出した。

その流れを見つめる私の心に、よくわからない空気が漂い始めた。
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