この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
忘れられない指
第4章 決意、そして失恋・・
凌空はケーキにばかり気をとられているのか、端の女性にはまだ気づいていないようだ。
私は彼の袖をつんつんと引っ張った。
「あちらの方からの差し入れなんですって」
言われてやっと、凌空は窓際に目をやった。
彼女はまた、涼やかな笑顔で会釈をした。
「あ、どうも・・こんばんは」
「こんばんは」
「あの・・マスターのお知り合いですか?」
恥ずかしそうに彼女は身をすぼめる。
自分の口から言おうかどうしようか、迷っているように見える。
マスターもなかなか口を開かない。
すると、後ろのテーブル席から声が飛んできた。
振り返ると、
常連の雑貨屋の店主、溝口さんだった。
「その人はねぇ、マスターの恋人だよ!
5年くらい前よく来てたんだよね?」
風を切る音がするくらいのはやさで溝口さんからマスターへ向き直ると、
だらしなく頬をたるませた、今まで見たことのない幸せそうな髭面がそこにあった。
その顔見たら・・
なにもかも、すべてがその通りだと言っていた。
私は彼の袖をつんつんと引っ張った。
「あちらの方からの差し入れなんですって」
言われてやっと、凌空は窓際に目をやった。
彼女はまた、涼やかな笑顔で会釈をした。
「あ、どうも・・こんばんは」
「こんばんは」
「あの・・マスターのお知り合いですか?」
恥ずかしそうに彼女は身をすぼめる。
自分の口から言おうかどうしようか、迷っているように見える。
マスターもなかなか口を開かない。
すると、後ろのテーブル席から声が飛んできた。
振り返ると、
常連の雑貨屋の店主、溝口さんだった。
「その人はねぇ、マスターの恋人だよ!
5年くらい前よく来てたんだよね?」
風を切る音がするくらいのはやさで溝口さんからマスターへ向き直ると、
だらしなく頬をたるませた、今まで見たことのない幸せそうな髭面がそこにあった。
その顔見たら・・
なにもかも、すべてがその通りだと言っていた。