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忘れられない指
第4章 決意、そして失恋・・
マスターの恋人・・・
その言葉は私の頭の中を駆けずり回って、
追い払おうとしてもなかなか出ていかない。
うそ・・マジで・・・
あと一口で食べ終わるケーキをひたすら見つめていると、
ポンと背中を叩かれた。
凌空だ。
上目づかいに凌空を窺うと、彼は私には目もくれずにマスターに顔を向け、
「ほんとなの?ホントにこの人がマスターの恋人なの?」
やけに明るい声で確かめた。
どんな顔で答えるのか・・
懸命に自分を励まして、マスターの表情を見るためにしっかりと顔をあげた。
「うん・・じつは・・そういうことで・・」
真面目くさった声音。そしてなんておだやかな眼・・・
「そういう事ってどういう事よ?」
また後ろから溝口さんの声が飛んできた。
今、店中の客達がマスターの言葉に耳を傾けている。
観念したように慎介さんは、
「え~・・このたび彼女と・・飯村恵子さんと結婚することになりました」
破裂するような喜びの声。
そのあおりをくらった店中の客達が一斉に拍手を送る。
つんざくような歓声があがる。
今、全員が幸せの輪の中で踊っているのに、私だけ・・
私だけが・・
小さな暗い穴の中に入っていた。
たった今、
私の恋は・・
終わった。
その言葉は私の頭の中を駆けずり回って、
追い払おうとしてもなかなか出ていかない。
うそ・・マジで・・・
あと一口で食べ終わるケーキをひたすら見つめていると、
ポンと背中を叩かれた。
凌空だ。
上目づかいに凌空を窺うと、彼は私には目もくれずにマスターに顔を向け、
「ほんとなの?ホントにこの人がマスターの恋人なの?」
やけに明るい声で確かめた。
どんな顔で答えるのか・・
懸命に自分を励まして、マスターの表情を見るためにしっかりと顔をあげた。
「うん・・じつは・・そういうことで・・」
真面目くさった声音。そしてなんておだやかな眼・・・
「そういう事ってどういう事よ?」
また後ろから溝口さんの声が飛んできた。
今、店中の客達がマスターの言葉に耳を傾けている。
観念したように慎介さんは、
「え~・・このたび彼女と・・飯村恵子さんと結婚することになりました」
破裂するような喜びの声。
そのあおりをくらった店中の客達が一斉に拍手を送る。
つんざくような歓声があがる。
今、全員が幸せの輪の中で踊っているのに、私だけ・・
私だけが・・
小さな暗い穴の中に入っていた。
たった今、
私の恋は・・
終わった。