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忘れられない指
第7章 思いがけない誘い
スクランブル交差点をすり抜けるように歩く、というよりは流れている人ごみを眺めながら
凌空を待つ。
ハチ公と並んで、なんてベタな待ち合わせ場所を指定するとは、
茶目っ気たっぷりの凌空らしい。
約束の12時ちょうどに凌空はやって来た。
「おまたせ」
はにかむ凌空の顔はいつもと違って少し気取った感じに見える。
いや、緊張してるっていうほうが当たってるかな・・
「なんか・・真昼間の凌空さんて、別人に見えるね」
褒め言葉とは言えないような私のセリフに、凌空はガクッとコケて見せた。
「ひでえなぁ、もう・・まあいいか。 じゃあさっそく行きますか」
人の波に乗って歩き出した凌空に小走りでついていく。
そんな私を振り返り、
ぴたりと横について混雑の中を進み始めた。