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忘れられない指
第7章 思いがけない誘い
「そろそろ・・正体を明かしてくれてもいいんじゃない?」

シークレットで出会って仲間になって、1年が過ぎてもまだ彼らの苗字を知らないし、
仕事も教えてもらっていない。
それでも別に不自由はなかったからあえて聞いたりしなかったけど、
こうして2人きりで話をする機会ができたのだからと思い切って聞いてみた。

凌空は大きく頷いた。

「苗字は大原。大原凌空っていうのがオレの名前。
 会社はね、ヒバリ文具、って知ってるよね。そこの販売促進課にいるんだ」

ヒバリ文具と言えばテレビでCMもやってるし、
誰でも知ってるし使っている有名な文房具のメーカーだ。

「すごいね!超有名な大手じゃん!
 私ここのボールペンとか好きだよ、デザインがいいもん。
 一応デザイナーだからね、こだわってんだぁ、安いボールペンでもね」

互いの仕事に共通の話題を見つけられたことは嬉しい発見となった。

デザインに関するいろんな物や店や考えや、それこそ話は大きく膨れ上がった。
今までどんな仕事なのか教えてくれなかったから、
仕事の話となると私が一方的にしゃべりまくって、それを3人が聞いてくれて。

これからは話題も増える。一歩も二歩も凌空に近づけた気がした。

「これで咲ちゃんと対等に話ができるかな」

おどけた凌空の笑顔に、胸がキュンとなった。
この男とも・・新しい何かがはじまるのだろうかと、うっすらと想像し始めた。
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