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MY GIRL
第11章 それぞれの過去
「高宮くんっ!やっぱり具合悪かったんだ…」

保健医の先生にも手伝って貰い、高宮先輩をベッドまで運ぶ。

「大樹っ…あたしの風邪移っちゃったんだ。あたしのせいで…っ」

「とにかく安静にしてなきゃ。矢野くんと立石くん、ありがとう。吉岡さんも病み上がりなんだから安静にしてなきゃダメよ?」

「…っ、はい…」

美咲が返事した、その時。

「う…」

と声がして、俺達は一斉に高宮先輩の方を見た。

荒い息を吐いたまま、うっすらと目を開く高宮先輩。

「大樹っ!ごめんね、風邪移しちゃって…」

美咲が高宮先輩の手を握ると…

「なおやって…、誰だ…」

「…え」

思わず固まってしまう位、衝撃の言葉を言った。

「なお、や…?」

なおやって、美咲の元彼の尚也の事だよな?

美咲が一番、思い出したくない人物…

後ろから見ても、美咲が震えてるのが分かる。

それまできょとんとしてた涼太が、察したような表情を浮かべた。

「…誰なんだよ」

高宮先輩の低い声が響く。

保健室に、何ともいえない空気が漂う。

「先生、席外すねっ」

気まずくなったのか気を使ったのか、涼太のように何か察したのか、保健医は保健室を出ていった。

俺達の間に沈黙が流れる。

遠くで聞こえる部活の声と、高宮先輩の荒い息と時計の秒針以外、何も聞こえない。

暫くして、美咲が口を開いた。

「あたしの…元、彼」

そう言うと、驚いて美咲を見る高宮先輩。

悲しい瞳になったのを見て、俺も心が痛んだ。

嫌…だよな、自分の女が過去の男の名前呼んだら…

物凄く傷付いた顔…そんな表情でも、酷く美しいと思った。

この様子じゃ、美咲と尚也が付き合ってた事知らなかったんだな。

まあ、簡単に話せる内容じゃねぇが…

あれは、笑い話にも出来ないだろう。

傷付いた顔のまま、高宮先輩は美咲に問う。

「何でだよ…お前は今俺の女だろ?何で元彼の名前呼ぶんだよ…」

「…っ!?」

驚いた顔をする美咲。

俺も驚いた。

美咲があの男の名前を呼んだ…?

「い、つ…?」

「昨日。美咲を看病してる時、寝言で」

高宮先輩には、話してると思ったんだけどな。

…言わねぇか、辛い事ばかりだったもんな…


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