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MY GIRL
第16章 東京
こいつは時々訳の分からない事を言う。

恋愛経験はそこら辺の女より豊富な癖に、男の気持ちに、俺の気持ちに鈍い…鈍すぎる。

マジでお前位だ、俺の気持ちに気付いてないのは。

俺に関わる人、美咲に関わる人…皆知ってんのに。

小学生の頃から何度も告白紛いな事をしたりアピールしたりしてるのに、全く気付かない…

それどころか気付こうともしない美咲。

もう鈍感っていう病気だよな…

もし美咲が俺の気持ちに気付いたとしても、俺の事を絶対にそういう目で見ないって事は分かりきってる。

でも、俺は…

窓の外に見える、街に並ぶ夥しい数のラブホテルを横目で見る。

セフレでもいいから、あそこに連れ込みてぇ…

「ね、音楽○○○○に変えていい?」

「あ?あぁ…」

1つのミュージックプレイヤーを2人で使ってる俺ら。

家に忘れてきた、と絶望してた美咲に、2人で一緒に聴く事を条件に貸してやる事にした。

俺が選んで聴いてた比較的エロい曲が多いアーティストの曲を停止し、何にしようか唸ってる美咲。

…このエロい曲で美咲の気分もエロくさせて、

「蒼汰、ホテル行こ…?」

っていう状況を作りたかったんだけどね。

…まあ冗談だけど。

そして、元々作為なく趣味が合っていた、俺達が好きなロックバンドの曲に変えた美咲。

「シャッフルシャッフル〜」

嬉しそうに色々流してみた後、美咲が決めたのは。

片思いが片思いで終わる曲。

おいこれ…俺にぴったりの曲だぞ。

せめてお前らにぴったりの、プロポーズの言葉が入った曲にしろよ。

…いや困るか。

「ねー、お腹すいた。何か食べようよ」

「お前が大樹さん宛に作った愛のこもったクッキー」

「さっき蒼汰の分あげたでしょ!」

「もう食った。美味かった。大樹さんの分全部食ってやるよ」

「だーめ!…あ、そうだ。ポテトチップスあったよね?蒼汰、ちょっと屈むよ〜」

言いつつ華奢な体を屈め、足元に置いてある鞄の中を探る美咲。

イヤホンが耳から抜けそうになり、押さえながら美咲の体に近付く。

美咲の長くて艶やかな髪がなだれ落ちていく。

さらけ出されたうなじに大量に付いてる消えかけのキスマーク。

これを見ると、数年前の自分の行動が嫌でも思い出されてしまう。


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