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先生、早く縛って
第22章 指定席の女
「一海さん、いってらっしゃいませ」
スーツ姿にボストンバッグという仕事用の出で立ちで玄関に向かう俺を送り出すため、和服姿の義母がそそくさと歩み寄る。
うるさくかまうような事はしないが、俺の服装に問題がないかはきっとしっかりチェックしているのだろう。
「一海、みっともない真似だけはするなよ。母親に似るのはその顔だけでいいからな……」
座敷の食卓にいる父から声がかかった。
ご飯に味噌汁、そして焼き魚……
義母が作った純和風の朝食を前に、拡げた新聞から目は離さず、いつもの、ただ要件を一方的に告げる会話スタイルだ。
「……私の息子なんだ。もうちゃんと一人でこなせるだろう」
少し間をおいて付け加えられた一言。
それがどういうつもりで口にされたものなのか……俺はその意味をはかりかねた。